まだまだ音楽はこれからだ!

ライブイベントブッキングサービス「Unity」運営会社代表が音楽活動のこと、音楽業界の現状や問題点、新しい提案などを書いてます。

ライブハウス事情について考える ~2.調査・分析 お金編~

ライブハウス経営の構成要素
『商品』、『人』、『お金』、『販路』について
前回の『人』に引き続き今回は『お金』を調査・分析していきたいと思う。
ここではライブハウス周辺の『お金』に関する現状を 整理したい。

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『運営費』
ライブハウス側の視点からライブハウスを運営するための費用についてまとめる。
 既存のライブハウスについての分析をしたいので設立にかかる費用はおいておいて
月額いくらくらいかかるのかをざっくり計算してみたい。

費用として思いつくのは以下の項目くらいだろうか。
・家賃:月50〜100万円 (東京圏の目安)
・従業員の給料:月160万円 (従業員8人×20万円)
・その他必要経費:月40万円 (場所に依るので概算)
   -機材のメンテ費・購入費
   -ドリンク・フード代
   -光熱費
   -チケットや宣伝費   

上記は家賃相場やライブハウスの給与水準からの概算となるが
ピッタリではなくとも遠からずではないかと思う。
最低でも250万円近くは毎月費用として計上される。
これはイコール損益分岐点なのでこの金額以上売上げがなければ赤字だ。

つまり1か月を30日として毎日営業したとして
毎日8万円以上を売上げなければならない。

実際には休みなく毎日イベントを開催できるところも
一握りだと思うので出演者・観覧者が集まらないライブハウスは相当厳しいと思われる。(いろいろなライブハウスのスケジュールを確認したが空きが目立つ)

 

『出演料金』
次は出演者側の視点から。
日本のライブハウスでは『ノルマ制』という制度がとられていることが多い。

ライブハウスが出演者に対してチケットノルマを課す。
これがそのライブハウスの出演料とイコールとなる。

ノルマが2,000円×20枚=40,000円だとすると
ライブハウスの出演料は40,000円ということで確実に払わなければならない。
出演者はチケットを売り、その売り上げを出演料に充当することができ
その差額は出演者の自腹となる。
この場合、チケットを2,000円で10枚売ったなら20,000円は自腹を切るという形だ。

つまりライブハウスは出演者にノルマをかけることで
その日の売上げを確保できるという制度なのである。

ネット上のあらゆるところで昨今のライブハウスの状況は
この『ノルマ制』に原因があると書かれている。

出演者さえ集まればノーリスクで運営できるのでライブハウスだけが
良い思いをしていると批判されているのもわかる。
ただ、ライブハウスとしてもボランティアで運営しているわけではないので
無料で誰でも出演させるわけにはいかない。 

『ノルマ制』(=出演料金)に対して批判が上がるのは
払う金額に対してそれ相応の見返りがないためではないだろうか。

サービスの対価として料金が発生すると考えた場合、
出演者が享受するサービスを考えるとあまりにもライブハウス寄りの出演料金になっているように思う。 

『チケット代金』
最後に観覧者目線でチケット代金について。
大体のライブハウスでは入場料として1,500~2,000円ほど、
プラスドリンク代金として500円を観覧者から徴収している。
(アーティストによっては独自に安く設定しているところもあるが
それはアーティストが自腹負担しているのでその場合は除く。) 

自分の友人などを誘った場合、2,000~2,500円くらいを
ライブハウスの入り口で支払わなければならないわけだ。

友人の所属する1アーティスト 約30分程度のライブを観るために
支払う金額としては高すぎないだろうか。
そして~2.調査・分析 商品編~のライブハウスの空間でも書いた通り
ほとんどのライブハウスは休憩する場所がなく、居心地がよいわけではない。 

これでは誘う側からしても申し訳なくて次回はなかなか誘えない。

観覧者にとってもサービスの対価として高すぎるチケット代金が
足を遠のかせているといっても過言ではないだろう。

【~2.調査・分析 お金編~ まとめ】
○運営費
 運営費は最低でも250万円以上。出演者・観覧者が集まらないライブハウスの経営は相当厳しい。

○出演料
 ライブハウスでライブをするには出演料(ノルマ)が必要。しかし、その金額がライブハウスから享受できるサービスの対価としては高すぎる。

○チケット代金
 ライブハウスという場所で得られるサービス・経験に対して高過ぎで適切な金額になっていない。